1.は「爽健美茶」のCM曲であったので,日本の音楽に疎い私もリアルタイムで知っている数少ない倉木の曲である。「倉木麻衣論」の中でも書いたが,この曲は「ストレートなアメリカン・ロックナンバー」と評されることが多いのだが,実は6部構成という非常に複雑な内容をもつ。
少しでもロックを知っているものならすぐに気がつくのは,この曲の背景には,ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の1965年の大ヒット曲(ビルボードの年間ヒットチャート第1位)「(I can get no) Satisfaction」が見え隠れするということだ。コーラスでこの曲の一節が歌われるとともに,
「たとえ何かにつまづいたとしても Rolling Stone」
と,この世界最大のR&Bバンドを示唆する歌詞が存在する。ただ,ここでの"rolling stone"は英語の有名なことわざ「A rolling stone gathers no moss.」に関連付けられているのかもしれない。このことわざは2つの解釈を持ち,「常に進歩・発展するものには余計なものがたまらず,常にフレッシュな状態で活躍できる」という「動」を肯定的に捉える意味と,逆に「落ち着いてじっくり考えていなければ何も残すことはできない」という否定的な意味があるが,ここでは後者の意味にとられるようだ。
「たとえ何かにつまづいたとしてもそれは大したことではないから さらに前進しよう」と。
気になるフレーズは,まず一つは多用される
"It's too much for me."
「もうたくさんだ」くらいの意味か。いつものように倉木は過去と決別し,来るべき未来への希望を歌う。
さらに
"Stand for your life" 「命がけで立ち上がれ!」
(*注) やはり,The Beatlesには"Run For Your Life"という曲がある。
この曲は初期においてはライブのオープニング曲,最近ではエンディングに歌われることが多いが,「最高の時間与えてくれた君」をライブの観客のことと捉えれば,これは,あたかもビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のように,観客との一体化を測る仮想空間ソングとなり,まさにライブに特化した曲ということが言えよう。
歌詞は,倉木にしては珍しく"dance"と"chance"で英語詞が韻を踏んでいる。
2.はしっかりしたR&Bバラード。近年「平成の歌姫」と呼ばれるアーティストが数多く登場したが,そういったシンガーたちが「キメ」に使えるような佳曲である。面白いのは,彼を「あなた」と呼ぶとき,倉木はたいてい「泣く」。ここでも,やはり倉木は弱い女になる。
英語詞が多いが,こなれていなくて作文調。コーラス部分で歌詞カードに
"I just wanna do is be with you"
とあるのは「学校文法」としては明らかな間違い。ただ,口語表現では許されるか。正しくは
"I just wanna do is to be with you"。
3.は「自分の気持ちにもっと素直になれ」ということをアジっている曲の様だが,リミックス曲ではあるが原曲が提示されておらず,歌詞も聞き取りにくいのでコメントしづらい。ノリのいい曲には仕上がっているが・・・。
ジャケットはほぼ間違いなくブルース=スプリングスティーンの「明日なき暴走」(Born To Run)のパロディであろう。