倉木麻衣の研究
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*補論04 倉木は落ち目か?

倉木麻衣は「落ち目」なのか?

 ある方からメールをいただいた。最近倉木のCDの売り上げが落ちていて,掲示板等でも「落ち目だ」と悪口を書かれるし非常につらいという。

 確かにこれはデータ面からだけ見れば真実である。最新のデータではないので実際にはこれに+アルファしてもらえればいいが,倉木のCDの売り上げをグラフにすると以下のようになる。


 

 逆説的だが,倉木の「悲劇」はその初期の大成功にある。何せデビュー曲が100万枚以上,デビューアルバムが400万枚近く売れるという大ヒットを飛ばしたため,その後は何をやってもデビュー曲を超えることができないという笑えない困難に陥ってしまったのだ。2004年3月現在最新のシングル(といってももう1年近く前の作品だが)「風のららら」はとうとう12万枚まで落ち込んでしまった。

 ということで,2チャンネル等でささやかれるのは,「倉木もうすぐ引退」とか「このまま売れなくなって消えていく」とかいう心無い中傷である。確かに3年間でシングル売り上げが10分の1になったことは事実だが,それが本当に「倉木の没落」と言えるのだろうか?

 ここでは,私は二つの観点からこの乱暴な中傷に反論を加えてみたい。

 まず,ひとつのテーマは世界的な「CD不況」の蔓延である。日本の場合を例にとれば,邦楽CDの売り上げは倉木がデビューする前年の1998年をピークに年々減り続けている。以下の表から分かるように2002,03年の日本全体の邦楽シングルCD売り上げは,何と1998年の約半分に激減しているのだ。

年シングル 98比 アルバム  98比  CD合計 98比
1998 153,216 100210,669 100363,885   100
1999 145,429  95195,751 93341,180   94
2000136,492  89197,685 94334,177   92
2001107,582  70182,777 87290,359   80
200281,172  53169,303 80250,475   69
200385,941  56152,547 72238,488   66

単位:1000枚,出典:社団法人日本レコード工業会http://www.riaj.or.jp/index.html

 このCD不況の原因としてよく言われるのが,ひとつはレンタルCDの隆盛とCD-Rの廉価化によるコピーの蔓延である。レンタル業者からCD制作会社への著作権料は入るとは言ってもその影響は計り知れない。第二にWinMXやWinnyなどいわゆる「ファイル交換ソフト」による音楽の無断配信がある。そして三番目に,これが最も深刻とさえ言われるのだが,若者文化の変化が挙げられる。すなわち,携帯電話が若者にとっての「必須アイテム」となったことによって,従来CD購入の中心層であった高校生・大学生の年齢層が電話料金の支払いに汲々とし,その結果CD購入へ小遣いを回す余裕がなくなったということである。特にジャパニーズポップスの売り上げは大半がこの層に支えられているといっても過言ではなく,携帯電話の普及がCD売り上げの減少に与えた影響は大きい。

 そこで,次のグラフを見ていただきたい。

 


(「シングル総計」は×100,「倉木アルバム計」はその年に出た(Love,Dayは2000年で集計)倉木のシングルの売り上げ平均値)

 このグラフから分かるように,確かに倉木のCDの売り上げは下降線をたどっている。しかし,対応する日本におけるCD売り上げ全体のデータを見るとほぼ同一の減衰傾向があることが分かる。

 以下のグラフは,日本全体の邦楽CD売り上げがずっと2000年の水準を保ったままになるように補正をかけたグラフ。倉木のみのセールスの減衰比がよく分かる。

 

 

 このグラフを見ても分かるように,実は2001-2002年の倉木のセールスは,特にシングルではほぼ横ばいであり,「落ち目」という評価はまったく値しないことが分かる。もちろんだからといっても倉木の減衰比の方が全体の減衰比より大きいことに違いはない。ただ,2000年のデータは「Love, Day After Tomorrow」「Stay by my side」「Secret of my heart」という巨大な売り上げを持つ「初期三部作」支えられている。この時代は「倉木麻衣」というアーティストがいわば「社会現象」になった時代であり,強力な追い風が吹いていた時期である。「一世を風靡した」アーティストには必ずこういう時期がある。天地真理然り,ピンクレディ然り,マイケル=ジャクソン然り,この時期にはアーティストの存在自体が巨大なカリスマ化するため,乱暴に言ってしまえば,どんな曲でも出せば勢いで売れてしまう時期でもある。しかし,この時期は誰でもやがて終わる。そしてそのまま消えてしまうものもいれば,「安定期」に入ってスーパースターの道を歩み続けるものもいる。だからこそ,誰も晩年の美空ひばりを「落ちぶれた」とは言わないだろうし,決して「スリラー」を超えることができなくても,マイケル=ジャクソンの一挙手一投足は世界中の注目を集めるのである。2000年の倉木は確かに神がかり的なパワーを持った。しかし,問題は「風」が止んで以降の活動である。そこで,2001年,2002年を見ると,シングル1枚あたりの売り上げ平均枚数は31万枚,23万枚と,きちんと「大ヒット」といえるレベルを維持し,02年には「Feel fine!」の45万枚のスーパーヒット曲をものにしている。いいタイアップに恵まれるなど「風」が吹けば,まだまだ同時代のアーティストの先頭を走るだけの力があるのだ。ただ,直近の2003年の減衰比の大きさから目をそむけることはできない。では,ここで倉木は落ち目になったのか?

 思うに2003年は倉木にとって異例尽くめの年であった。前年からの大変な長期ツアー。その合間を縫って3月,4月,5月と3ヶ月連続してシングルをリリースした後,今度は長く沈黙が続く。そして,前回の「FAIRY TALE」よりわずか8ヶ月後には準備不足の感があるニューアルバムのリリース。さらに名曲であり,倉木の代表曲のひとつとも呼んで差し支えないほどの風格を持つ「Time after time~花舞う街で~」は,コナン映画の主題歌だったが,映画の宣伝が始まり,一般の注目が集まるよりかなり前にリリースしてしまい,またアーティスト自身が動かず静止画のみによるPVは失笑を買い,そのせいか思ったようなセールスが出ない。・・・その後の曲もリリースの期間があまりに短かったため,佳曲を提供しながらも,シングルは10万あまりのセールスを記録したにとどまった。そこにはファンならずとも何かしら「ちぐはぐ」なものを感じ,やり方によってはもう少し違っていたのではないかと思ってしまう。したがって,この2003年という年は,倉木のアーティストとしての力量にというよりもむしろGIZAの販売戦略に問題があり,思ったようなセールスが出なかったと考えたい。その証拠に2004年初頭に発表されたベストアルバム「Wish You The Best」はたちまちミリオンセラーを記録した。ただ,このまま2004年も同じ右肩下がり状況が続けば,営業だけに責任を負わせることも難しくなる。折りしもこの文章を書いている途中の2004年3月4日,待望の倉木の新曲「明日へ架ける橋」がアナウンスされた。NHKの夜の連続ドラマの主題歌になるということであるが,あまり視聴率の期待できないチャンネルと時間帯であるが,NHKブランドの力はやはり無視できないものがあるので,この新曲でもってぜひ「Reach for the sky」の47万枚に迫るセールスを目指してもらいたいものだ。


 以上が,「倉木没落論」に対する「音楽業界的回答」である。

 ところで,私は最初に「二つの観点から反論する」と述べた。そこで,次に「文化的観点」から倉木のアーティストとしてのレゾン・デートル(存在意義)について考えて生きたい。

 「倉木麻衣論 補論2」で,私は倉木の魅力はその「可塑性」にあると述べた。すなわち,倉木はいつまでも未完成の魅力,いわば大輪の花を咲かせる風情を持った可憐なつぼみの魅力を持ち続ける稀有なアーティストであり,ファンは「麻衣ちゃんを何とかNo.1にしたい」と思って彼女を応援し続ける。それこそが,これだけ露出が少ないにもかかわらず,倉木が巨大な人気を保っている秘密ではないかと書いた。もし,倉木の出す曲出す曲がすべてミリオンセラーとなり,レコード大賞を連続して受賞したり,キャラクターグッズが街に溢れるようになれば,おそらく「にわかファン」は増えるであろう。しかし,Easy come, easy go...彼ら彼女たちは,次にもっと魅力的な「商品」が提示されれば,ためらうことなくそちらへシフトしていくのではないか。しかし,そのとき以前から倉木を熱心に支持し続けてくれていたファンのどのくらいが残っていてくれるだろうか?

  だからこそ,敢えて言おう,倉木は今のままがちょうどいい。倉木は決して「落ち目」なんかではなく「今一番いい時期」なのだと。そして時々,絶好のタイアップをつかんだり,すばらしい楽曲を得たときミリオンセラーの夢を見させてくれればいい。そうすれば,ファンはいつまでもある一種の悲壮感を持って倉木を愛し続けるであろう。比べては非常に(双方に)失礼である。しかし,ふと頭をよぎるのは「阪神タイガースは9連覇してもいいのか?」という問題提起。時々勝つからこそあれだけ熱狂的に応援できたのではないか?

 そして,もしそれを「意識して」行っているとしたら・・・。長期シングルリリースなしも,TV等での露出の少なさも,すべてが説明がつく。その倉木が2003年末から「京都学生祭典」「紅白歌合戦」「ベストアルバム発売」と驚くほど急激に露出を始めてきた。今こそ機は熟したのだ。ファンの皆さんどうぞ安心して欲しい。倉木は決して「落ち目」などではない。倉木と倉木のスタッフは,ここ半年彼女が言うように「スローダウン」を行ってきた。そして,今,ギアが入った。

 No.1を続けることよりも,ずっと人々に愛し続けられることのほうがずっとずっと難しく価値がある。そして,今をときめくスーパースターたちがみんな,もうすっかり「過去の人」になった頃,倉木にだけはいくつになっても現役で歌い続けていて欲しいと思うのだ。

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