タイトルは"Winter Bells と複数形なのだが,倉木の歌は「あなたにあげるよ ウィンターベル」と単数形。教会の鐘を担いできたようなイメージになってしまう。複数形なら鈴かハンドベルのようなクリスマスのイメージになるが。
シーンとしては,遠距離恋愛中の恋人たちがクリスマスに再会し,永遠の愛を誓い合うといったところか。ここでの倉木は珍しく底抜けに明るい。しかも,倉木が恋人を「君」と呼ぶとき,彼女はいつものように元気一杯のユニセックスな女性となる。この曲での「彼」はすっかり影が薄くなってしまっているのだ。
この曲の特徴は「言葉が足らない」ところか。倉木の詞はいつも音楽のパッセージを超えて次の旋律へあふれ出して行くのに,ここではずいぶん控えめ。
「白い雪景色」
のフレーズには,たとえば
「白い雪景色の中で」
のようにもう4音ほど入る余地があり,その方が落ち着く。好みの問題でもあるが。
完全にシングル向きの曲であり,重厚なアルバム「FAIRY TALE」の中で聞くと違和感を感じてしまう曲でもある。
「冬が過ぎ…」はお約束の第3メロディ。「ヒット曲」としてはすべての要素を兼ね備えている。
2.は,R&B(リズム・アンド・ブルース)バラードの傑作。
よく「どこかで聞いたような気が…」という人がいるが,ブルーノート音階という限定的な音符構成を使うブルースは,どうせ全部が「どこかで聞いた感じ」の曲になるから仕方がない。
恋人を「あなた」と呼ぶ倉木はお約束どおり弱い女になる。音楽性はむしろこの曲の方が1.よりは上かもしれない。B面曲ながらファンの間では非常に人気が高い曲のようだ。
英語詞は
"my heart is raining"
が気になる。雨が降っているのは心の中であって,空の上からハートがぼろぼろ降ってくるわけではない。ここはやはり,
"It's raining in my heart"
のような表現の方が適当か。(メロディにはまらなくなるが)
参考:The Beatles "Please Please Me"
I don't want to sound complaining
but you know there's always rain in my heart
しかし,作詞者に倉木と連名でKeith Bazzleという人物の名があるので,私の方が間違っている?