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*補論14 クラッシックとポピュラー音楽~歴史家とファンの狭間で~

 クラッシックという言葉に「古い」と言う意味は無い。"class"の最上階にあるもの,すなわち最高級のものを指す言葉だ。だから「クラッシック音楽」というと「最高の音楽」と言う意味であり。中でも狭い意味では18世紀後半のモーツァルトやベートーヴェンの時代のヨーロッパ音楽のみを指す。当然現代人の我々はそれらの楽曲を普遍的な「最高の音楽」として与えられ,愛好しているわけだ。

 遠まわしな言い方で恐縮だが,実は私にとっての「倉木麻衣の音楽」はつい2004年4月まではクラッシック音楽であった。

 クラッシック音楽の特徴は視聴者にとってすでに完結された形で楽曲が提示されているということである。その音楽は時代を経て,我々の前に一そろいの完結したシリーズとして存在し,世界中の誰もが普遍的な感動を持ってその曲に接することができる。もちろん時代順に聞いていく必要も無いので,ベートーベンの第9を聞いた1年後に初めて交響曲第5番「運命」を聞くということは当たり前にあることなのだ。我々は同時代人としてモーツァルトの曲をヒットチャート上で応援することは不可能であり,そこには歴史のフィルターを通して生き残った「時代を超えて」普遍的に最高のものがあるのみである。

 しかし,ポピュラー音楽は違う。ポピュラー音楽とは常に「時代とともに」在る。簡単に言えば,あとになって,

「あぁ,この曲がはやっていたころは悲しい恋をしていたなぁ…。」

とか,

「この曲は始めてもらった給料で買ったCDだ。」

とかいうように,常に個人的体験と強く結びつき切り離すことはできない。時代の波にもまれていないので,ある人がいいという曲を別の人はまったく知らなかったりもする。また,あるとき涙が出るほど感動した曲が,しばらくするとなんとも感じられない凡庸な曲に思えたりもする。さまざまな意味で「ライブ」であるのがポピュラー音楽である。

 本題に入ろう。

 何度か述べたように,私が倉木麻衣の音楽を知ったのは2004年1月,ベストアルバム「Wish You The Best」を聞いたときのことであった。したがって私は「Love, Day After Tomorrow」と「Tonight, I feel close to you」を同時に聴いたことになる。そこに時間的な間隔は無い。収録された16曲は「歴史のフィルター」を通って生き残ってきた「名曲」ぞろいであり,それらの曲に対して私は過去に何ら個人的な感傷を持ってはいない。つまり,それはクラッシック音楽であったのだ。

 ビートルズに対しても同じアプローチであったが,ビートルズはその後(一部の例外を除いて)「新曲」を発表することは無かったので,やはり私にとってはクラッシックのままである。

 クラッシックは「研究」するに容易である。なぜならば「先が見える」からだ。すなわち我々は交響曲第9番「合唱付き」のメロディを口ずさみながら,第5番「運命」のレビューを書くことが可能であるということだ。鳥瞰的な視野を持って総合的に論ずることが可能であり,後の「意外な」変化も予定調和的に運命論として捉えることができる。

 しかし,ポピュラー音楽はそうは行かない。すべてが「ライブ」である故に,次にどう転ぶか分からない。天才と賞賛したアーティストが次の週にはヒットチャートから消え去るかもしれないし,その逆もあるだろう。その意味で,思い入れたっぷりの感想を述べることはできても「研究」することは難しい。

 そして,私も今その「難しい」立場に立っている。

 2004年5月19日,倉木の新曲「明日に架ける橋」がリリースされた。しかし,これは私にとってははじめての,そして現状では唯一の倉木の「新曲」である。さまざまな想いが交錯し,涙ながらのレポートを書くことはた易いが,鳥瞰的に普遍的価値を持って論ずることはなかなか難しい。さらに"Wish You The Bestツアー"に8度参加することにより,私にとっての倉木麻衣は,教科書を抜け出し現実のものとなった。

 私にとっての「倉木麻衣新時代」がやってきた。

 今後の「曲解説」その意味で大きな困難が伴うであろう。克服は容易なことではないかもしれない。しかし,逆もまた真なりである。今まで机上の空論に過ぎなかった「クラッシック倉木」の曲解説が,リアリティを持って再登場してくることもあろう。「全曲解説」もこの趣旨に沿って追々に書き直していこうと思う。

 「歴史家」と「ファン」。今私はその狭間で苦悩しているところでもあるが,これからもできるだけその両者の長所を取り入れながら,分かりやすく,かつ意味のある音楽評論を書いていきたい。

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