今日,ある高校生の方から,
「あなたが倉木麻衣の"マイベスト"アルバムを作るとしたらどんな曲を選ぶか」
というご質問のメールをいただいた。
で,ふと思ったことがある。
倉木の曲の中から何曲かを「選び出すこと」は大変難しい。というのは倉木の曲は一つ一つが個別の曲であるだけでなく,すべてが一つながりになって,大きな「世界」を作っているからではないか。彼女はデビュー以来,自作の曲(詞)を通して,ずっとずっと私たちに対して同じメッセージを伝え続けてくれてる。
「always」 のブリッジ部分が一番分かりやすい代表例だが,
人生勝つときもあれば負けることもある。
でも,それはそれ。皆一生懸命やってるんだから神様は見ていてくれるよ。
君は,そのままの君でいい。
人生って結構素敵なものだから・・・。
そして,このメッセージは大半の倉木の曲の根底に流れる通奏低音となっている。つまり,倉木の曲は一曲一曲が独立しているというよりはむしろ,すべてがどこかでつながっていて,バルザックの「人間喜劇」や水島真司の「大甲子園」のような巨大な仮想統一世界を作っているような感覚に陥るということだ。 簡単に言うと,一つ一つの曲がただそれだけで存在するのではなく,一つ一つの細胞となって身体全体を作っているとでも言えばいいのだろうか。
もちろん一曲一曲の価値を貶めるわけではないが,その意味で,倉木の曲はただ一曲ポツンと聴くのではなく,アルバム一枚を通して聴いたときにこそその真価を発揮するように思える。
だから,「マイベスト」を作るのは非常に難しい。「Wish You The Best」の選曲がファンの間で賛否両論の大論争になったことは「全曲解説」の項で触れたが,その原因の一端はこんなところにあるのかもしれない。