No.2


「Love, Day After Tomorrow」「What are you waiting for」「think about」「Not that kind a girl」など,Yoko Bkackstoneの曲を中心に“R&B”に分類される楽曲は数多いが,実は倉木のR&Bはあまり“黒っぽく”ない。これはひとつにはこれらのR&B楽曲が主に倉木が10代の頃に歌われたため,声の“かわいらしさ”が,黒人シンガー特有の(日本人ならさしずめ和田アキ子のような)迫力感を持たないことによる。その証拠に,20代になって歌われたR&B「愛をもっと」などは,なかなか堂々としたブラックなパワーを感じることが出来る。しかし,この頃になると倉木は余りR&Bを歌わないようになった。

 それでは,倉木はR&Bという“本籍地”を捨て たのであろうか?

 ここで,逆のアプローチを行ってみたい。

 倉木に,名曲「Stand Up」がある。いわゆる“ストレートなロックナンバー”であり,そこには,たとえば若い頃のエルヴィスのような“ロカビリー”の味わいがある。これはカントリーミュージックにルーツを持つ白人の音楽である。しかし,ここでもまた倉木はぜんぜん“白人っぽく”ない。

 倉木は,何を歌っても 「倉木麻衣」なのだ。

 これは実は,1980年代頃の「アイドル歌手」の姿に近い。“デビュー当初の”という但し書きがつくかもしれないが,「横須賀ストーリー」以前の山口百恵は何を歌っても「山口百恵」であったし,ニューミュージック路線が始まる以前の松田聖子にも同様なことが言えよう。

 また,シンガーソングライターにもこのタイプが多い。全盛期のよしだたくろうの曲など,すべて「よしだたくろう」であり,それ以上でも以下でもない。

 さらにいえば,「演歌歌手」にもこのタイプが多い。

 しかし,どう考えても倉木はいわゆる「カワイコちゃんアイドル歌手」ではない。また,作曲をしないという意味において「シンガーソングライター」でもない。もちろん着物を着て(見てみたいが!)ご当地ソングを歌ってくれそうにもない。

 では,倉木麻衣とは何なのだ?


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