それは,今度は“物理的距離”の問題である。確かに韓国と日本との“心理的距離”は遠かった。しかし,どういってもアメリカやヨーロッパよりははるかに近いことに間違いはないのだ。しかも,同じ顔をした東洋人。同じ儒教道徳。おなじみのキムチや焼肉の国・・・。
近すぎるためにもはや気持ちをそそられることがなくなった日本のアーティストに対して,韓流スターの“微妙な距離”は日本人の心を見事につかんだのである。
私は,同じことが倉木にも言えるのではないかと思う。
日本のアーティストであるので,ファンは“いつか街でばったり会えるかもしれない”という期待を抱く。実際ライブ後にファンの前に姿を現して,自分の声で,直にファンに語りかけてくれもする。
ならば,“近い”のか?
いや,やはり彼女は“遠い”。マスコミへの露出は他の日本人アーティストに比べて極めて少なく,倉木はファンにとって“遠い”存在であることに変りはない。
しかし,この“距離感”が絶妙なのである。それが彼女の魅力の源泉であった。