No.2


 それでは,倉木麻衣はどうなのだろうか?

 かつて私は「倉木麻衣の社会学」において,彼女の人気の秘密を“日本の洋楽”という観点から考察したことがある。あの時は主に“音楽性”の観点から解説したのだが,実はこの“距離感”というテーマが,倉木の人気の原点であったような気がしてきた。

 倉木麻衣は日本の歌手である。しかし,彼女は決して目の前にはいない。捕まえようとすると,するりと逃げてしまう。「見出したもの〜魅力の秘密2」では,そんな「努力して意識しなければ認識できない存在」であるからこそ,我々は倉木に夢中になると書いた。

 その二つの論文を踏まえて今再び思うのが,ファンと倉木の“距離感”の問題である。

 現在,いわゆる“韓流ブーム”が日本中を席巻している。ぺ=ヨンジュンに始まったブームはあれよあれよと言う間に拡大・増幅し,今や(皮肉っぽく言えば)“韓国人なら誰でもいい”とさえ感じられるような勢いになってきた。さて,それではなぜこんなことになったのだろう。

 よく言われるのが,韓国は日本にとって「近くて遠い国」だということである。この国は一衣帯水の隣国でありながら,複雑な歴史的経緯の結果,心理的には決して近い国ではなかった。岡山からだと,ソウルは東京より近いと言うのに。

 しかし,これを逆に考えるとどうであろうか?確かに,さまざまな複雑な事情から日韓両国の“心理的距離”はそれほど近くはない。いや,なかった。それならばなぜ現在の“韓流ブーム”があるのか?


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