No.2


 私は常日頃,それだけではない,倉木の曲には何かもっと特徴的な原因が内包されているのではないかと考えていた。そして最近気づいたことがある。

 英語の"life"という単語。

 この単語には大雑把に「生活」と「人生,生涯」という二つの大きな意味がある。そして洋楽を聴くときに非常にしばしば感じることなのだが,"life"を「生活」という意味に使うとき,その曲は軽快なポップナンバーとなり,「人生」という意味に使うとき,今度は荘厳なアンセム(賛歌)となる。

 例を挙げると,The Beatlesの曲において,"life"は,"Yellow Submarine"では「生活,日々の暮らし」の意味に使われ,"In My Life"に於いては「人生,生涯」の意味に使われる。

 "As we lived a life of ease, everyone of us has all we need..."("Yellow Submarine") 
 「ぼくらは毎日楽しく暮らし,欲しいものは何でもここにあるのさ…」

 "There are places I remember all my life though some have changed..."("In My Life")
 「姿は変わってしまったけれども,生涯にわたって忘れられない場所がある…」

 一般的にジョン=レノンに「人生」が多く,ポール=マッカートニーの作品に「生活」が多いような気がする。そしてまた一般的には,テクニカルなマッカートニーの曲よりはエモーショナルなレノンの曲の方が心の中に有無を言わさず,ダイレクトに侵入してくる。

 つまり,倉木における"life"の意味である。

 倉木は自らが作詞した英語詞の中でこの単語をよく使う。いくつか例を挙げれば,

 *"This is your life"

"This is your life
夢なくした君は臆病になる
Just one more try
そんな時は思いだして
This is your life"
 *"Start in my life"

"We can start in my life
一緒に あきらめず夢と
ねぇ もう一人の 自分に逢えるから
気持ち一つで 変われるんだ
ほら ここから始めよう
Just start in my life"

 *"Double Rainbow"

"突然気付いた あなたのこと
こんな近くにいたんだね
You're in my life"

 気がつくことは,"Double Rainbow"のみどちらの意味でも通じるが,他の曲に於いてはすべて「life=人生,生涯」の意味で使われているということだ。

 この単語は他の曲の中にも散見されるが,どうやら作詞家倉木麻衣にとっては「life=人生」というのは自明のことであるようだ。


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