No.7


 平安神宮ライブにおいても緊張がほぐれたのか3曲目の「風のららら」からは落ち着きを取り戻し,愛する京都のイメージを「Time after time」で語る。「日本の四季はここでこそ一番感じられる」と。そこにはMCが下手でしどろもどろになっていたかつての少女の姿はなく,一個の凛としたアーティストが存在する。そして慣れ親しんだ「Secret of my heart」〜「Stay by my side」を経て「Reach for the sky」に到達する頃には倉木の歌唱は完璧な調和を見せるようになる。発売されたCDと同じことを歌うことをよしとする意見もあるが,私はライブにはライブならではの工夫や「輝き」があってしかるべきであると思う。その点この「Reach for the sky」は,今までの倉木のどのライブパフォーマンスよりも「完璧」である。もちろん同じキーで歌っているはずだが,ここでの倉木の声はまるでオクターブ上で歌っているかのように輝き,繊細な表現力を確保したまま,気持ちが前へ出てきて,聴く者の心を直接つかんでいく様が手に取るように分かる。この曲はどちらかといえばCDではもったりとした洗練されていないイメージを受ける曲なのだが,ここではまったく別の曲のように新しい生命を授かる。この「Reach for the sky」こそ,平安神宮ライブの最高のポイントであると思う。しかし,それに続く「冷たい海」もいい。この難曲は最後まで破綻なく歌い上げられるだけでなく,おそらくは実際の倉木の体重の何百倍も重い存在感を放出している。そして「Feel fine!」「always」とアップテンポの曲が続くが,「Feel fine!」を聞いて感じることがある。


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