No.5


さらに「FAIRY TALE」がとどめをさす。

 このアルバムは「おとぎ話」がテーマとなっているので,中高年に対しても中高生に対しても等しくノスタルジーを供給してくれる。しかし,最後の最後「fantasy」でオジサマたちはあっけなく陥落する。

 この曲で倉木はこう歌う。

 「両手でバランスとりながら 歩いたあぜ道」

 「夕日を背中に受けながら 風に波立つ草原を 走り抜けたあの頃の」

しかし,ここで歌われるのは倉木が実際に経験した世界ではない。それは,倉木自身によって,

 「心通し見ていた風景」

であると宣言される。

 大体,倉木は関東のある大都市の出身であると聞く。それならば余計に倉木が少女時代を過ごした1980年代後半から90年代初めにかけて,彼女が「バランスをとりながら あぜ道を歩く」ようなことはまずありえまい。だから,これは実際に経験した情景ではなく,倉木の「心象風景」である。ならば彼女はその姿をどこで知ったのか?


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