さらに「FAIRY TALE」がとどめをさす。
このアルバムは「おとぎ話」がテーマとなっているので,中高年に対しても中高生に対しても等しくノスタルジーを供給してくれる。しかし,最後の最後「fantasy」でオジサマたちはあっけなく陥落する。
この曲で倉木はこう歌う。
「両手でバランスとりながら 歩いたあぜ道」
「夕日を背中に受けながら 風に波立つ草原を 走り抜けたあの頃の」
しかし,ここで歌われるのは倉木が実際に経験した世界ではない。それは,倉木自身によって,
「心通し見ていた風景」
であると宣言される。
大体,倉木は関東のある大都市の出身であると聞く。それならば余計に倉木が少女時代を過ごした1980年代後半から90年代初めにかけて,彼女が「バランスをとりながら あぜ道を歩く」ようなことはまずありえまい。だから,これは実際に経験した情景ではなく,倉木の「心象風景」である。ならば彼女はその姿をどこで知ったのか?