No.4


 上記の「歌姫バカ一代」で優れた音楽評論を展開するバツ丸氏はこれらの倉木の音楽に対して,非常に面白い指摘をされている。いわく,

 (筆者は)「倉木に対し、「宇多田も含め本格的・アメリカ的・洋楽的」路線を追求しがちなその他大勢とは違い、これら路線や宇多田が築いたものを継承しながらも、それに加え、日本的な歌謡曲の要素を加味した音楽性であり、さらに本人の外見も合わせ、「親しみ易さ・なじみ易さ・聞きやすさに特化したもの」であったからと考えているからだ」

と言う。すなわち,かつて類似を指摘された宇多田と倉木は,実は宇多田が「洋楽の王道」を歩み,倉木が「日本の歌謡曲」+「アイドルポップス」を基礎としていると言う点でまったく異なった音楽性を持つと指摘されている。的を得た論議であると敬服するが,そう思って考えるといろいろなことが「腑に落ちる」。なぜ,私のところに40代の男性から頻繁にメールが届くか。TAK MATSUMOTOは倉木に「40代オジサマたちの永遠のアイドル」山口百恵の「イミテイション・ゴールド」を歌わせたが,なぜあの曲がNo.1ヒットとなったのか。その他もろもろ謎が解けてゆく。しかし,私はその先にもっと巨大な影を見る。その地に足がついた歌唱,ファルセットを多用しながら時には明るく,時にはもの悲しく,時にささやき,時に熱唱するその歌声・・・。女王美空ひばりである。倉木とひばり?荒唐無稽の比較かもしれない。しかし,バツ丸氏が指摘されるように,その歌唱法や旋律の中に,私は美空ひばりにまで続く,日本の歌謡曲の大きな流れを感じるのだ。かつて日本の歌謡アイドルに夢中になった経験を持つオジサマたちは,もうすでに倉木に夢中だ。


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