しかし,第2作「Perfect Crime」では様相が変わってきた。ジャケット写真の倉木は格段に大人っぽくなり,オジサマたちの背徳感を消し去った。音楽においては「delicious way」から「Perfect Crime」への音楽的変化,非常に優れた音楽評論集である「歌姫バカ一代」によれば,「R&BからAORへの変化」は,その音楽のターゲットの年齢層の幅を飛躍的に広げることとなった。
さらに詞の分野でも同様の変化が見られる。たとえば「Brand New Day」では,主人公はレトロなアイテムである「列車」に乗り,「Love, Day」の携帯を捨て,
「にじんだインク バレるかな たまには涙していいよね」
と,これもまたレトロな万年筆で愛を綴るのである。
さらに,名曲「Stand Up」では昭和40年のローリング・ストーンズのヒット曲「Satisfaction」が歌われるが,ここに登場する「DJ」とは冒頭のラジオのチューニング音からも分かるように最近流行の「クラブのDJ」ではなく,「AM深夜放送のDJ」である。40代前後の人間なら「オールナイト・ニッポン」「セイ・ヤング」「パック・イン・ミュージック」などのテーマソングが聞こえてくるであろう。さらに「Reach for the sky」は昭和41年頃のビートルズサウンドを狙ったものであり,これらの波状攻撃はレトロな洋楽ファンに大きなシンパシーを与えた。