No.4


 確かに倉木のCDの売り上げは下降線をたどっている。しかし,対応する日本におけるCD売り上げ全体のデータを見るとほぼ同一の減衰傾向があることが分かる。

 実は2001-2002年の倉木のセールスは,特にシングルではほぼ横ばいであり,「落ち目」という評価はまったく値しないことが分かる。もちろんだからといっても倉木の減衰比の方が全体の減衰比より大きいことに違いはない。ただ,2000年のデータは「Love, Day After Tomorrow」「Stay by my side」「Secret of my heart」という巨大な売り上げを持つ「初期三部作」支えられている。この時代は「倉木麻衣」というアーティストがいわば「社会現象」になった時代であり,強力な追い風が吹いていた時期である。「一世を風靡した」アーティストには必ずこういう時期がある。天地真理然り,ピンクレディ然り,マイケル=ジャクソン然り,この時期にはアーティストの存在自体が巨大なカリスマ化するため,乱暴に言ってしまえば,どんな曲でも出せば勢いで売れてしまう時期でもある。しかし,この時期は誰でもやがて終わる。そしてそのまま消えてしまうものもいれば,「安定期」に入ってスーパースターの道を歩み続けるものもいる。だからこそ,誰も晩年の美空ひばりを「落ちぶれた」とは言わないだろうし,決して「スリラー」を超えることができなくても,マイケル=ジャクソンの一挙手一投足は世界中の注目を集めるのである。2000年の倉木は確かに神がかり的なパワーを持った。しかし,問題は「風」が止んで以降の活動である。そこで,2001年,2002年を見ると,シングル1枚あたりの売り上げ平均枚数は31万枚,23万枚と,きちんと「大ヒット」といえるレベルを維持し,02年には「Feel fine!」の45万枚のスーパーヒット曲をものにしている。いいタイアップに恵まれるなど「風」が吹けば,まだまだ同時代のアーティストの先頭を走るだけの力があるのだ。ただ,直近の2003年の減衰比の大きさから目をそむけることはできない。では,ここで倉木は落ち目になったのか?


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