No.2


 かつて(マイクロフォンとアンプが発明される前は)歌はすべて「ライブ」の存在であり,歌手は目の前の聴衆にのみ向かい歌いかけたものだ。クラッシックの歌手が代表例であるが,声の大きさにはおのずから限界があるから,彼らが対象とするのはせいぜい小規模なホールに入るだけの聴衆である。そこには電気的増幅装置は存在しないから,ホールの隅々に至るまで声を通すためには,特異に訓練された歌唱法が必要となる。すなわち,腹式呼吸で,喉を大きく開け,朗々とした発声を行う。そうしなければ遠い席の聴衆は歌手の歌を聴くことはできない。すなわちオペラ歌手を代表とするクラッシックの声楽家は,最も優れた「ライブ・ミュージシャン」なのである。NHKのアナウンサーの発声も同様で「声を通す」ことに主眼がおかれる。それでは,ポピュラー歌手はどうであろうか?ポピュラー歌手の場合は基本的に「商業歌手」であるから,その歌唱はレコード,テープ,CD,映画などに録音され,大量に複製が作成され頒布されるということが前提となる。もちろんライブであっても電気的な増幅が行われるからドーム球場でのコンサートが可能になる。


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