No.3


 しかし,それでもまだ,「偽装」疑惑は残る。では,さらにもうひとつの証拠を提示しよう。デビューアルバム「delicious way」の中に"happy days"という曲がある。かなりパーソナルな経験を歌った歌だが,この歌詞から見えてくるものがある。

 倉木自身がこれはデビュー準備をきっかけに離れ離れになった親友のことを歌った歌と言い,その親友に対する謝辞が"delicious way"のアルバムジャケットの中に記されている。ここまで手の込んだ偽装がなされるであろうか?また,クレジットには「Words by Mai Kuraki」と記されている。しかし,著作権は作者の死後まで保護される。いろいろと偽装すれば後々のトラブルの種になることは明らかで,製作者側がそのようなリスクを犯すとは考えにくい。それでもまだ,「一部の曲は実際に作詞していても,ゴーストライターが書いたものもある」という非難があるかもしれない。こう言われれば倉木だけではなく,世のほとんどの作詞家が疑惑の対象になってしまうので詳述しても仕方ないのであるが,倉木の詞を読み通してもうひとつ感じることは,彼女が非常にユニークな,よく言えば独創的な,悪く言えば他人には分かりづらい独特のボキャブラリーを持っているということである。たとえば"delicious way"という言葉。彼女の言によると,「素敵な明日へ続く道」という意味なんだそうだが,説明されないと分かりづらい。また,「life」という言葉を「生活」という一般的な言葉ではなく「人生」という重い意味で使いたがる。全ての曲を通して,一貫した「倉木節」を感じさせるのだ。


■続きを読む

■前に戻る

◆目次へ戻る