CD 初回限定盤【CD+特典DVD / GZCA-5086 / 3,500yen(tax in)】
通常盤 【CD / GZCA-5087 / 3,059yen(tax in)】
Release:2006年08月02日
曲目 | 作詞 | 作曲 | 編曲 | |
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1. | Diamond Wave | 倉木 麻衣 | 徳永 暁人 | 徳永 暁人 |
2. | Ready for love | 倉木 麻衣 | 川本 宗孝 | Day Track |
3. | ベスト・オブ・ヒーロー | 倉木 麻衣 | 徳永 暁人 | 徳永 暁人 |
4. | Juliet | 倉木 麻衣 | 岡本 仁志 | 岡本 仁志 |
5. | Growing of my heart | 倉木 麻衣 | 大野 愛果 | 葉山たけし |
6. | 会いたくて... | 倉木 麻衣 | 徳永 暁人 | 徳永 暁人 |
7. | ホログラム | 倉木 麻衣 | 徳永 暁人 | 徳永 暁人 |
8. | State of mind | 倉木 麻衣 | 大野 愛果 | 葉山たけし |
9. | 今 君とここに | 倉木 麻衣 | 綿貫 正顕 | Day Track |
10. | Cherish the day | 倉木 麻衣 | 呉地 マサキ | 大賀 好修 |
11. | Voice of Safest Place | 倉木 麻衣 | 大野 愛果 | Vo.Arr.倉木 麻衣 |
オリコンデータ | |
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最高順位 | 3位 |
登場回数 | 1回 |
初動枚数 | 7.8万枚 |
累積枚数 | 13.2万枚 |
ベストアルバムを間に挟むとはいえ,「If I Believe」から「Fuse of love」まで丸2年もの間隔があいたのに対し,今回は前アルバムからわずか1年弱のインターバルしか空けずに制作された。そのため,発売前には多くのファンから作品の質が心配される声が上がっていたが,どうやらそれは杞憂であったようだ。一つ一つの曲は“意外にも”というと失礼だが非常に高水準を保っている。制作期間が短かった割にはいい仕事をしたと感じるが,そこにはやはり明らかな要因があるようだ。
倉木が1枚のアルバムに起用した作曲家の数は「delicious way」:5人(Cyber soundは1人と計算),「Perfect Crime」:5人,「FAIRY TALE」:3人,「If I Blieve」:5人,「Fuse of love」:4人,に対し,本作は初登場のメンバー2人を含め全部で6名と,もっとも多くなっている。
短い制作時間で曲の数をそろえるために苦肉の策であったのだろうが,このことが逆に曲にバリエーションを持たせ,音楽的な幅を感じさせる作品群に仕上がった。もはや大野・徳永・YOKOのトロイカ体制の時代は終わり,GIZA作曲家群総出の“集団指導体制”の時代が始まったといっていいのだろう。しかし総演奏時間47分47秒はかつてのLP時代の演奏時間に等しく。「Perfect Crime」が56:37,「FAIRY TALE」が56:43であったことを考えれば,多少の不満が残る。(ただし,「delicious way」45:49,「If I Blieve」45:50,「Fuse of love」48:26と,倉木の作品は余り演奏時間が長くない。)LPはその構造上45分程度しか音声を収録できなかったためやむを得ないことであるのだが,CDは74分の最大収録時間を持つ。もう1曲の+αを望むのは贅沢というものであろうか?
しかし,このアルバム全体を通して考えたとき,妙なことに気がつく。「Fuse of love」はおなじみの作曲家群を中心にしながら,聴きながらどことなく“よそいき”の気分を感じたものだが,このアルバムにはバラエティがありながらも,一種の郷愁を感じる。不思議に思ったが,制作者一覧を見て納得がいった。“Directed by Tokiko Nishimuro”と記されているではないか!なるほど,これがこのノスタルジーの原因かとひざを打った。実際「Ready for love」を聴きながら感じる「FAIRY TALE」のムードは,そのディレクションが為せる業かとも思う。
このアルバムの特徴はまさに上記した“曲のバリエーションの豊富さ”にあると思われる。かつてビートルズの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」に対する「The Beatles(ホワイト・アルバム)」の例があるが,この手の作品は評論家の受けは悪いが,ファンには喜ばれるものである。たとえば,トータルアルバム「FAIRY TALE」の中に置かれたシングル「Winter Bells」は,いかにも無理やり押し込んだような印象をぬぐえないが,本作においては,3曲の各シングルは割とお行儀よく,曲の流れの中に納まるのだ。
特筆すべきはGIZAの対応。
常に“営業努力の足らなさ”が指摘されてきたGIZA Studio社であるが,今回は初回DVD付き盤,通常盤,限定盤と3パターンのCDをリリースした。さすがに,最近の売り上げ数長期低落傾向には危機感を持っているようだ。
- Diamond Wave
先行するシングル曲とアルバムの題名が同じ(大文字小文字は違うが)になったのは今回が初めて。
軽やかな夏らしいナンバーになっており,また,“アースコンシャス”のテーマで作られた曲であるが,このテーマはなぜかアルバム全体のテーマとはなっていない。
- Ready for love
レゲエにチャレンジした曲。倉木が「I 〜」と歌い始めると,つい「〜shot the sheriff〜.」と続けて歌ってしまった。
最初の英語詞はおそらくビートルズの「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」へのトリビュート。
And when I touch you I feel happy inside
It's such a feeling
That my love, I can't hide
曲の中に自分の名前を歌いこむのはモーニング娘。などにも見られる最近の風潮だが,作詞はやや稚拙。しかし,この“稚拙さがたまらない”というのも倉木ファンの定説。
- ベスト・オブ・ヒーロー
ただし,アルバム向けにリミックスされている。「Growing of my heart」もそうだが,少しソフィストケイテッドされている。西室テイストだろう。
- Juliet
「ロミオとジュリエット」の純愛をイメージして書いた詞という。夜のトレンディ・ドラマの主題歌のムードを持つ曲。“朝を一人で迎える”や“口づけ”という直裁的な単語を倉木が使うのは珍しい。ここのところはうっかり見逃してしまいそうだが,実は倉木の心境の変化?を示す重要な局面にある曲。
- Growing of my heart
ただし,アルバム向けにリミックスされている。
- 会いたくて...
トラディショナルなラブ・バラード。
いつもの倉木なら
「大丈夫 君ならば 一人で出来るよ」
とだけ言うところだが,
「なんて...言葉 うらはら」
というところが,実は「Juliet」にも通じる倉木の心の変化。ファンとしては妙に気になるところだろう。
- ホログラム
おしゃれな曲。メグ=ライアン主演のハリウッド映画のテーマソングに使いたい。倉木にもこんな歌がうたえるのだなあと,しみじみボーカリストとしての成長を感じる。
スタジオのスタッフ(素人)をコーラスに使うというのは倉木自身のアイデアということだが,もちろんルーツはビートルズの「Yellow Submarine」にある。
ライブで観客と一緒に歌う歌というコンセプトは,「Fuse of love」の「chance for you」と同じ位置づけ。
- State of mind
あまつ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 僧正遍昭
【通釈】天空を吹き渡る風よ、雲をたくさん吹き寄せて、天上の通り路を塞いでしまっておくれ。天女の美しい姿を、もうしばらく引き留めたい(舞姫たちが退出する道を閉ざしてしまってくれ。もう少しその姿を見ていたい)。http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/henjou.htmlより
道のべの 清水ながるる柳かげ しばしとてこそ 立ちとまりつれ 西行
【通釈】道のほとりに清水(しみず)の流れるこの柳(やなぎ)の木陰(こかげ)には、ほんの少しの間休もうと思って立ち止まったのだったが、涼(すず)しくて心地(ここち)よかったので、つい長居(ながい)してしまったことだ。http://www13.plala.or.jp/hosonag/jukentanka2.htmより
この二つの和歌を効果的に使った秀作。作者の死後100年以上を経ているため著作権は消滅しているので,倉木は自由に使用してもかまわない。和歌と歌詞の間には余り意味のつながりはなく,あくまでもイメージとして使用したということだろうが,「今日あるものが 明日もあると限らないもの」というのは仏教思想の“諸行無常”を歌っており,古典とのミスマッチはない。「State of mind」は「心もよう」くらいの意か。
曲はポップで快適。「Fuse of love」の「LOVE SICK」の位置づけだろう。2006のライブではもっとも愛される曲になりそうな気がする。
この曲の着歌が鳴り,倉木自身が電話を取って曲が始まるという演出も面白い。
- 今 君とここに
イントロは“四畳半フォーク”。「そうね〜」とこのアルバムでは珍しく女言葉の歌詞。伝統的日本歌謡曲の系譜上の曲。
- Cherish the day
“cherish”はもちろん「てんとう虫のサンバ」とは関係なく「いつくしむ」という意味の英語。
曲調は桑田佳祐のムード。このアルバム2曲目のラップが印象的だが,こちらの方が出来がよい。
- Voice of Safest Place
この曲のボーカルアレンジは倉木自身が担当し,コーラスもサンプリングは使用せずにすべて生声で歌われたという。倉木を“アイドル視”する人はまだ多いが,もはやそのような議論を過去のものとする曲であろう。