「ビートルズ音楽論」 1 第一期 “不良少年の時代” −クォリー=メンからザ=ビートルズ創世期 (1950年代〜1962年前半,レコードデビュー以前)
この時期の“プレ=ビートルズ”の音楽は,いまだ“アマチュア=バンド”の域を出ない。初期クォリー=メンの,“スキッフル時代”を別にしても,イギリスは,いまだ,戦後の混乱期を完全に脱却したとは言い難い時期で,アメリカのレコードも入手困難であった。そのため,彼らは,ラジオを通して聞こえてくる音楽を,“記憶”だけを頼りに,懸命にコピーしていたのである。特徴的な音楽スタイルとしては,リーゼントに革のジャンパー,そして細身のジーンズという,不良っぽいいでたちで,アメリカのロック=アンド=ロールをがなりたてる−という図式が続いていた。彼らが好んで演奏したのは,主に,チャック=ベリー,カール=パーキンス,リトル=リチャードなどの曲で,メンバー間に好みの相違はあったが,(特にポールはメロディアスなバラードを好んだ)彼らの音楽的ルーツとも言える,ストレートなロック=アンド=ロールをレパートリーとしていた。レノン=マッカートニーによるオリジナル曲もありはしたが,いまだ主流とはなっていない。当初は演奏技術も未熟であったが,彼らは,リヴァプールの小さなクラブや,ドイツのハンブルク遠征などを通して,しだいにセミプロとしての実力をつけていった。 |