CD 初回限定盤【CD+特典DVD / GZCA-5086 / 3,500yen(tax in)】
通常盤 【CD / GZCA-5087 / 3,059yen(tax in)】
Release:2006年08月02日
ベストアルバムを間に挟むとはいえ,「If I Believe」から「Fuse of love」まで丸2年もの間隔があいたのに対し,今回は前アルバムからわずか1年弱のインターベルしか空けずに制作された。そのため,発売前には多くのファンから作品の質が心配される声が上がっていたが,どうやらそれは杞憂であったようだ。一つ一つの曲は“意外にも”というと失礼だが非常に高水準を保っている。制作期間が短かった割にはいい仕事をしたと感じるが,そこにはやはり明らかな要因があるようだ。
倉木が1枚のアルバムに起用した作曲家の数は「delicious way」:5人(Cyber soundは1人と計算),「Perfect Crime」:5人,「FAIRY TALE」:3人,「If I Blieve」:5人,「Fuse of love」:4人,に対し,本作は初登場のメンバー2人を含め全部で6名と,もっとも多くなっている。
短い制作時間で曲の数をそろえるために苦肉の策であったのだろうが,このことが逆に曲にバリエーションを持たせ,音楽的な幅を感じさせる作品群に仕上がった。もはや大野・徳永・YOKOのトロイカ体制の時代は終わり,GIZA作曲家群総出の“集団指導体制”の時代が始まったといっていいのだろう。しかし総演奏時間47分47秒はかつてのLP時代の演奏時間に等しく。「Perfect Crime」が56:37,「FAIRY TALE」が56:43であったことを考えれば,多少の不満が残る。(ただし,「delicious way」45:49,「If I Blieve」45:50,「Fuse of love」48:26と,倉木の作品は余り演奏時間が長くない。)LPはその構造上45分程度しか音声を収録できなかったためやむを得ないことであるのだが,CDは74分の最大収録時間を持つ。もう1曲の+αを望むのは贅沢というものであろうか?
しかし,このアルバム全体を通して考えたとき,妙なことに気がつく。「Fuse of love」はおなじみの作曲家群を中心にしながら,聴きながらどことなく“よそいき”の気分を感じたものだが,このアルバムにはバラエティがありながらも,一種の郷愁を感じる。不思議に思ったが,制作者一覧を見て納得がいった。“Directed by Tokiko Nishimuro”と記されているではないか!なるほど,これがこのノスタルジーの原因かとひざを打った。実際「Ready for love」を聴きながら感じる「FAIRY TALE」のムードは,そのディレクションが為せる業かとも思う。
このアルバムの特徴はまさに上記した“曲のバリエーションの豊富さ”にあると思われる。かつてビートルズの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」に対する「The Beatles(ホワイト・アルバム)」の例があるが,この手の作品は評論家の受けは悪いが,ファンには喜ばれるものである。たとえば,トータルアルバム「FAIRY TALE」の中に置かれたシングル「Winter Bells」は,いかにも無理やり押し込んだような印象をぬぐえないが,本作においては,3曲の各シングルは割とお行儀よく,曲の流れの中に納まるのだ。
特筆すべきはGIZAの対応。
常に“営業努力の足らなさ”が指摘されてきたGIZA Studio社であるが,今回は初回DVD付き盤,通常盤,限定盤と3パターンのCDをリリースした。さすがに,最近の売り上げ数長期低落傾向には危機感を持っているようだ。