CD No.:GZCA-5074 Release:2004年01月01日
2004年元旦に発売された(この時代,元旦に店舗が開いていることが多いということを後世の歴史家はこのアルバムの発売日を基にして確認することになるかもしれない)倉木自身初のベストアルバム。16曲が収録されているが,この選曲にはファンの間でも大きな論争があった。
そのいくつかの問題点を挙げると,
1.に関しては,これはファンがどうこう言える義理でもない。近年CD不況の中で「人気アーティストのベストアルバムは売れる」ということが公式化してきた。商業音楽としては出して当然だろう。ただし,純粋にシングル曲を再録しただけではシングルCDをすべて購入済みのコアなファンは買わないかも知れないので,いくつかの工夫はなされている。このような場合往々にして「新曲」が一曲挿入されることが多いのだが,今回はそれは見送られている。替わりに全曲リマスタリングが施され,気持ち曲の感じが変わったことと,豪華な写真集ブックレットが付属することにより,ファンの購買意欲を誘っている。ジャケットもアーティスティックなフィーリングよりはむしろ倉木の「美しさ」を前面に出したものとなっており,コアなファンと新しいファンの両方をターゲットにしたものである。私もこれで釣られた。
2.3.はCDの収録時間74分ほど(ちなみにこの時間はCDソフトを開発したSONYが"帝王"故ヘルベルト=フォン=カラヤン(ベルリンフィルハーモニー音楽監督)に相談し,カラヤンがベートーベンの交響曲第9番を演奏したときの時間に合わせたといわれる。)であるので,どのみち全シングルを収録することは不可能なので,思い切って多めにカットされ,アルバム曲が2曲収録されたのだろう。それらのアルバムに対する購買意欲を喚起するという読みもあったかもしれない。
4.5.は2枚組みにしなければ不可能。しかし,豪華ブックレットをつけるということもあり,費用等で問題があったのではないか。あまり高くするとセールス数がかせげない。
ともあれ,このアルバムを聴けば倉木が今までいかにすばらしい曲を歌い,いかにすばらしいアーティストであり,いかにすばらしいスタッフに恵まれていたか,そしてジャケットやブックレットを見ればいかに美しく魅力的な女性であったかということが分かる。新年早々今年初のミリオンセラーとなったということであるが,当然のことと言うことができるだろう。
ひとつ音楽以外に注目しておきたいことがある。アルバムジャケットである。
倉木のアルバムジャケットに関しては,「delicious way」「Perfect Crime」「FAIRY TALE」が「初期三部作」ともいえる類似性を持っていることは別のところで述べた。「If I Believe」では構図が大きく変わったが,実はこの4作に「Secret of my heart」を加えた5作には共通する特徴がある。
それは,写真の倉木が「笑っていない」ということである。
実際の倉木は明るい性格のようで,笑顔を目にすることが多い。しかし,アルバム写真では今まで一度も笑わなかった。シングルにおいても,「Baby I Like」「Feel fine!」以外は(「風のららら」は気持ち笑っているようにも見えるが,ただまぶしいだけのようにも見える。)ジャケット写真で倉木は笑わない。これは,倉木が「お茶の間のアイドル」になり神秘性を失ってしまうことを避けようとするGIZAの戦略であろうが,その倉木がこの「Wish You The Best」では,これ以上ないほどの笑顔を見せる。2003-2004の年末年始以降,いろいろな意味で倉木の露出が増えてきたが,この「笑顔」もその「ニュー倉木」の名刺代わりなのだろうか。