「key to my heart」 はファンの間で非常に人気の高い曲。沖縄民謡のようなゆったりとエキゾチックなムードで始まるこの曲は途中からテンポアップし,スカ?というのか,裏打ちの激しいリズムの海の中を倉木は自由自在に泳ぎまわる。シングルカットすれば大ヒット間違いないと思われるが,このような名曲が行儀よく収まるべきところに収まっていることが,このアルバムの価値を高めている。

 「ねぇ 君と行くよ 明日への果てしない旅」

と,ここでも「未来への旅立ち」が高らかに歌われる。

 歌詞は大半が英語詞。"key to my heart"という表現はさまざまなところでつかわれるので,倉木にもおなじみのフレーズであったのだろう。

 同じタイトルを持つ楽曲は結構存在し(CRAIG DAVIDThe Kelly FamilyThe Emotions),他の分野,たとえば,>映画>やスヌーピーのキャラクターなどにもこの名が使われている。

"I like you just the way you are" という表現には珍しくビリー=ジョエルの影響が見える。

 「Winter Bells」 はこのアルバムの中で唯一居心地のよくない曲。チャートの1位を記録したヒット曲でもあり,底抜けに楽しいムードを持つために,うら悲しく謎めいたこのアルバムの中では浮き加減。しかし,ジャケット(歌詞カード)における幻想的なムードが完全に雰囲気が壊れることを救っている。

 「Loving You…」 は2ndツアーとなった「Loving You…ツアー」のテーマソングとして使われ,当時未発表だったためにCD化が待たれていた人気曲。関係がギクシャクしてきた恋人たちが,もう一度昔に戻りたいと願う気持ちが,女の子の心の変化を通して切なく歌われている。

 「懐かしい帰り道を 歩く速さ変わらないね」

と歌われるとき,そこには同じく失いそうな愛をつなぎとめようと,彼と

 「同じ速さで歩きたい」

「Love, Day After Tomorrow」の少女の姿がかぶる。そして「自分らしく」という倉木の永遠のテーマが切なくも力強く歌われる。彼を「君」と呼ぶときの倉木には神々しいまでの力を感じる。やはり第3メロディが印象的。

 曲全体を通して感じることは,この曲は実は「Love, Day After Tomorrow」のアンサーソングになっているのではないかということだ。そう考えて歌詞を見ていくと,この両曲の間には多くの共通項があることが分かる。

つまり,「Loving you...」の曲世界は,「Love, Day After Tomorrow」の「2日後(あさって)」の世界ではないのだろうか?倉木は「Love, Day After Tomorrow」の「あさって」に当たる今日,彼の元へ向かい言えなかった言葉を伝えるのだ。

 そうすると,ここにはもうひとつのノスタルジー,自分の過去へ捧げるオマージュが見えてくる。


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