ここで,少し紙面を割いて「FAIRY TALE」の下敷きとなる「青年心理学」のお話をしたい。

 「青年期」とはいつごろのことを言うのだろうか?

 我々が,青年期,あるいは若者という言葉を使うとき,一般的には高校生から25歳前後の人間を指すことが多い。しかし,本当の意味の「青年期」はそれよりもはるかに大きな意味を含んでいる。

 まず一つは「肉体的」な意味での「若さ」「青年期」があげられる。

 肉体的には「青年期」とは「成長期」である。そう考えれば人間の成長期は大きく分けて2度,二つの意味を持って存在する。一つは生まれて直後の「赤ん坊」の時代であり,もう一つは小学校高学年から中学生の頃である。しかし,若ければ若いほど「青年」と言うわけではない。なぜなら,「"若い"赤ん坊」というものは存在しない。赤ん坊は,"若い"のではなく"幼い"のだ。

 確かに,3,000グラム前後で産まれた赤ちゃんが,1年後には3倍以上の10キログラムぐらいになる。これは,ものすごい成長速度である。ところが,この"生気に満ちあふれた"ような赤ちゃんが,実は,人間の一生の中で,最も危険な時期であることも,また確かなのだ。

 生後1年までの赤ん坊は,他の動物と比べても,非常に病気にかかりやすく,死にやすい。そのひとつの理由は,人間が進化の過程で,母体への負担を軽減するため,妊娠期間を短縮してきたことにある。これを「生理的早産」と言う。実際,ゾウの妊娠期間は約2年もあり,一般に野生動物の赤ん坊は,生まれると間もなく,目も見え,自分の足で立って,親の後をついて歩くことができる。弱肉強食の世界ではそれは当然のことであるのだが,人間は文明というバリアに守られて,自分の足で歩けないどころか,目も見えず,まったくの無防備状態でこの世に登場するのだ。そして,生後1年間に急激な成長を続けるのだが,この間は,身体的に非常に危険な状態である。

(蛇足ではあるが,さらにつけ加えれば,人間がもっと激しい勢いで成長する時期がある。それは妊娠期間中であるが,顕微鏡でなければ見えないような卵子が,3,000グラム前後まで成長するのであるからこれにまさる成長期はない。しかし,これこそが流産・死産など,人間がその人生において最も生命の危機にさらされる時期なのである。)

つまり,「"成長期"は生命にとって危険な時期」なのである。


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