Perfect Crime

CD No.:GZCA-5001   Release:2001年07月04日


*オリコンデータ
  1. 最高順位: 1 位
  2. 登場回数:17 回
  3. 初動枚数: 800,210 枚
  4. 累積枚数:1,303,860 枚


 私は「倉木麻衣論」で,「第2作"Perfect Crime"における倉木の立場は多少中途半端である」と書いた。このアルバムは「ヒット曲の寄せ集め」の色合いが濃く,トータルな意味での「アルバム」としての香りがしない。(実は「隠し味」があるのだが,それに関しては後述。)

 リミックスの「Reach for the sky GOMI REMIX」も含めれば13曲中8曲がすでにシングル発表された曲。先行発売したシングル曲をすべてアルバムに収録するのが近年の日本ポップス界の風潮だと聞くが,セールスのことだけ考えればそれもありかもしれないが,アルバムをアーティスティックに捉え,一個の芸術作品と考えたとき,個人的にはこの傾向には大きな疑問符がつく。時代は全く違うのだが,もう40年も前にはなるが,ビートルズは一つのセッションで生み出された最もキャッチーな曲をアルバム発売に先立ってシングルとして発表し,同傾向を持つアルバムの「予告編」的な意味を持たした。しかし,そのシングルは当アルバムには収録されず,アルバムはアルバムとして独自のスタンスを保つという方法がとられていた。たとえば,1967年にシングル「ストロベリーフィールズ・フォーエヴァー/ペニー・レイン」が発表された後,その世界観をさらに発展させたアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が発表されるが,このアルバムには先行するシングルは収録されず,またその後も1枚のシングルカットもされることがなかったが,現在でもポピュラー音楽史上最高のアルバムといわれ,高い芸術性を誇るとともに巨大なセールスを保っている。日本でも,1960年代,70年代は同様ではなかったかと思うのだが,音楽をアートとして大切にするのならぜひそういった「正道」に立ち戻ってもらいたいものだと思う。現状では1年に1枚「ベストアルバム」を発表しているようなものではないか?!

 アルバム全体のムードはなぜか「重苦しい」。「Stand Up」「Brand New Day」などの軽快な曲を多く含みながらなぜだろうと考えると,やはりタイトル曲の重々しさが全体を支配していることと,アルバムジャケットの倉木の見せる大人びた深刻な表情のせいであろうか。ちなみに,このアルバムジャケットは大成功した前作「delicious way」を強く意識したものになっている。ジャケットにおける倉木の位置はほぼ同じ,表情も同じ,顔の大きさは「delicious」が(顔中央の髪の生え際部分からあごの先まで)66mm,「Perfect」が70mmとほとんど変わらない。ただ大きく違うのは全体の色調が赤を基調としたカラーになっているところか。ちなみに次回作「FAIRY TALE」でもこの傾向は続く。ヘアスタイルが違うので完全な比較は難しいが,倉木の顔は前2作とほぼ同じ場所に配置され,頭頂部の切れ方もほぼ同じ。顔の大きさは66mmと,これも同じである。ただ違うのは色調が「緑」になっているところと,「delicious」では髪の毛をつかんでいた倉木が,2作では赤い花を,3作では緑のリンゴを手に持っている。ケース裏側の写真も3作とも倉木の立ちポーズで,基本的には同じ。次の第4作「If I Believe」では,構図ががらっと変わるので,この3作は後世「アルバム初期3部作」と呼ばれるようになるのかもしれない。


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