「Come on! Come on!」 は作詞にマイケル=アフリックが参加しているため,英語詞に今までには見られなかった熟した表現が多い。しかし,これは倉木のアイデアだろうが,英語と日本語を混ぜ合わせ,"to hazumu"と"to rhythm"で韻を踏ませてみたり,随所に楽しい遊び心が満載のアップテンポの底抜けに楽しいナンバーとなっている。ここでの倉木は他の曲にもまして明るい。
「always」 は本アルバム中最もはっきりした人生応援歌。セールス的には芳しくなかったようだが,スタンダードとして永く生き続けていきそうなムードを感じる。
最近のJ-POPの曲は,歌手自身が作詞を担当することが多いというせいもあり,内容が非常に個人的であることが多い。(J-POPと呼べるかどうかは別にして)モーニング娘。の曲などはそのグループ名自身が歌いこまれていたり,氷川きよしの「きよしのズンドコ節」(J-POP?)のようにタイトルがパーソナルであったりする。そのために永遠のスタンダードとして,数多くのアーティストにカバーされ続けていくということは考えづらい。
(たとえばジョン=レノンの場合「イマジン」はカバーできても「オー・ヨーコ」は誰にもカバーできない。)
倉木の場合もほとんどすべてが自作曲であり,パーソナルな内容を含む曲も多く,スタンダード・ナンバーにはなりにくい曲も多い。たとえば,「happy days」は意味を考えれば他人がカバーすることには抵抗を覚える。しかし,この「always」だけは,そのような呪縛から解き放たれて,永遠の「人生応援歌」として歌い継がれていくスタンダードになりそうな気がする。そうすればセールスも,それらカバー全体を考えた場合,決して「Love, Day After Tomorrow」には負けていないのである。
「What are you waiting for」 は暗い曲調だが意外にも強い決意を持った前向きな曲。歌われるのは決して「恋愛」ではない。多少うがった解釈を試みれば,こうも考えられる。
「歌手になる前の普通の高校生のときには,夢はいっぱいあったけれど,今のようなトラブルに巻き込まれるとは思っていなかった。あちらこちらでいわれのない非難中傷を浴び,ワイドショーのネタとなり,自分でも自分を見失いそうになった。とても苦しかったけれど,悩みぬいて私には分かった。やっぱり私はシンガー。私には歌しかない。どんなことがあっても私は歌さえあれば大丈夫。だからみんなもくだらないゴシップではなくて,私の歌を聴いてください!」
この曲はやがて「natural」や「SAME」となって結実する,倉木の「プライム・スクリーム」の前ぶれであったのかもしれない。倉木という人間はどこまでも正直な人だ。