No.5


(5) パフォーマンス全般

 「明日へ架ける橋」を歌うことは分かっていたのだが,ここには意外な設定がなされていた。私を含め多くのファンは,倉木の後ろにはいつものようにジェフリー=クェスト率いるexperienceの面々が控えていると考えていたが,ふたを開けてみるとステージ上にいたのは,倉木のほかには,グランドピアノの前に陣取るマイケル=リーとコーラスのサテンドールの3人のみというシンプルな構成であった。次回のシングル「Love,needing」に収録される「明日へ架ける橋〜ballad ver.〜」が歌われるのではという噂はあったが,まさかこれほどシンプルにまとめてくるとは予想しなかった。この試みは「マツケンサンバU」をはじめとして派手な衣装や過激なパフォーマンスが目立つ紅白歌合戦において,異彩を放つとともに,倉木の卓越した声と歌唱力を際立たせる結果となった。この歌唱によって新たなファンを獲得することも出来たのではないだろうか。

 その証拠に,2005年初頭に倉木のCDがチャートを急上昇し,

「明日へ架ける橋」
1月第2週171位 1,112枚
 累計 90,588枚 16週

「Wish You The Best」
1月第2週191位 2,707枚
 累計950,975枚 40週

と再びヒットの兆しが見られた。また,レンタルショップでも倉木のCDが大量に貸し出されている報告もある。これは明らかに「紅白効果」ということが出来よう。

 2003年と同じようにそれほどの派手さはなかったが,その美しい歌声と,緊張は見られたが卓越した歌唱力は,昔ながらのファンだけではなく,新たなファンの心もつかんだと言えよう。

(5) 総括

 以上のような点から,今年の倉木の紅白出場は地味ではあったが存在感を示すという意味において十分合格点をつけることが出来るものであったと考える。紅白直後の1月5日(実は12月29日にはすでに入手可能)のDVD「Mai Kuraki 5th Anniversary Edition Grow,Step by Step」の発売と,紅白で実際に歌われた,1月26日の「明日へ架ける橋〜ballad ver.〜」(「Love,needing」のカップリング)のセールスにも大きく貢献するのではないかと期待が持てる。この紅白出場を,シンガーとしての更なる発展へ有効に結び付けてほしいものである。


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