以上のことから考えて,紅白当日の倉木の出来は一般に言われているほど悪くはなく,控えめに見ても「ふつう」であったということが分かる。ただ,あれだけ歌いなれている曲でありながら歌詞を間違えたりしたように,屋外中継という寒さや音響コンデションのせいもあり極度の緊張状態にあり,100%の実力を発揮したとは言いがたいのかもしれない。歌い終わった後に見せた倉木の最高の笑顔は,心から「あー,終わった!」という安堵の表情であったのだろう。
「ふつう」程度なら何のために紅白へ出たかということであるが,ここにはGIZA側の販売戦略が大きくかかわっている。なんと言っても紅白の翌日,2004年元旦には倉木初のベストアルバム「Wish You The Best」の発売が予定されており,その前日の大舞台は最高の販促材料となるはずである。(どうも当日着ていたセーターは,その「Wish You The Best」のアルバムジャケット写真で着ているものと同じものに見える。)この点を「逆に失敗して幻滅されたら・・・」と老婆心から危惧する意見も多かったが,ベストアルバムは自身5作連続のNo.1ヒットとなり,あっという間にミリオンを達成したということと,私のように紅白と,1月2日にNHKで再放映された「平安神宮ライブ」を見て,その後ベストアルバムを買って,その結果こんなになってしまった(^_^;)人間がいることを考えても,紅白出場は成功であったといっていいのではないだろうか。(ちなみに,多くの方が私のサイト宛にメッセージをお寄せくださっているが,「紅白」をきっかけに新しくファンになったという人はかなりの数に上る。)
さらに付け加えるならば,「平安神宮ライブ」「紅白歌合戦」そして,「よるドラ」の主題歌(「明日へ架ける橋」)と続くNHKとの太いつながりは,2004年の倉木の活躍にとって大きな意味を持つことは間違いない。
ということで,2003年紅白歌合戦初出場の倉木は,さまざまな要因から決して100%の出来とはいえなかったが,「まずまず」のパフォーマンスであり,販売戦略上は大いに意味があった。と言っていいのではないかと思う。また,NHKとのつながりの強化により,2004年の紅白歌合戦への出場も有力になった。ファンならずとも年末が楽しみである。