No.8


 つまり我々40代男性は,倉木麻衣を「かわいいポップアイドル」として愛しているのではなく,自分たちの原風景の中に必ず存在し,自分たちを愛し,はぐくんでくれた女性・・・すなわち「母親」の姿をダブらせて見ているのではないか。

 倉木がこよなく愛するビートルズの曲「レット・イット・ビー」の中で,作者ポール=マッカートニーが14歳のとき亡くなった母メアリー(Mother Mary)は,同じ名前を持つ聖母マリア(Mother Mary)の姿で「息子」ポールの前に降臨し,「そのままでいいよ なるがままにしなさい」と癒しの言葉を伝える。この倉木の世界にはそこにもつながる母の愛が見える。「Fairy tale」〜「fantasy」を通じて,我々40代はそこに何よりも慕わしい「唯一の女性」=「母親」の癒しを見るのだ。

 そう考えると,我々40オーバーのいいオジサンたちが,この一人の少女にこれだけも魅入られる理由が分かる。

 我々は倉木の息子だったのだ。


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