No.2


 結論から言うと,倉木の魅力はその可塑性にあると思う。つまり,あれだけ大ヒット曲を連発しすでにスーパースターであるにもかかわらず,まだ「完成品」ではなく「素材」としての魅力を持っていて,自分の手によって自分だけのものに作り上げていくことができるような魅力とでも言えばいいだろうか。

 たとえば,倉木のチャートNo.1ヒットは驚くほど少ない。実は「Stay by my side」と「Winter Bells」のわずか2曲しかない。その代わり初登場2位の山を築き,最近の3曲「Time after time」「kiss」「風のららら」は3位とまりであった。ファンにとっては残念な結果ではあるが,しかし,「よーし,次こそは自分の力で1位にしてみせる!」という「元気」が出てくる。選挙のときに当選確実な候補者が選対の引き締めを図るために「苦しい戦いを続けております!」と連呼するのと同じだ。「自分の力で何とかしてあげたい…」。倉木はそういう魅力に満ちている。つまり,完成品ではないのだ。ファンはそこに自分が手を加える余地があると感じ,つい応援したくなる。この「中途半端さ」こそ,実は彼女の最大の魅力ではないだろうか。


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