1. 明日(あした)へ架ける橋 作詞:倉木麻衣 作曲:徳永暁人 編曲:池田大介・徳永暁人
  2. Lover Boy 作詞:倉木麻衣 作曲:大野愛果 編曲:DJ ME-YA
  3. 愛をもっと 作詞:倉木麻衣 作曲・編曲:YOKO B.Stone
  4. 明日へ架ける橋 〜insturmental

CD No.:GZCA-7049  Release:2004年5月19日 

NHK夜の連続ドラマ・テーマ/関西テレビ プロ 野球中継2004テーマ 1,000yen(tax in)

オリコンデータ
最高順位3位
登場回数12回
初動枚数51,215枚
累積枚数90,588枚


Personel:


 2004年3月4日,待ちに待った昨年5月以来の新曲がアナウンスされた。曲名は「明日へ架ける橋」「あす」ではなく,「あしたへかけるはし」と読むようだ。

 思わず「明日 架ける橋」と間違えてしまったが,実は倉木は昨年の4thアルバム「If I Believe」のラストナンバー「Tonight, I feel close to you」などでも,明らかにサイモンとガーファンクルの,というより世界ポピュラー音楽史上最高の名曲のひとつである「明日に架ける橋」(Bridge Over Troubled Water)をモチーフにした表現を多用していたため,実はこの新曲へ至る流れは既成事実であったのかもしれない。しかし,倉木自身には映画「戦場へ架ける橋」へのオマージュでもあったようだ。(「You & Mai」No.15)

 この曲については倉木自身が「春らしいミディアムテンポの歌で,明るい曲」(Mai-K.net Diary#66)と言っているようにの春らしいさわやかな曲に仕上がっている。。

 NHKのドラマの主題歌になるということなので,2004年の紅白歌合戦もこの曲での出場が期待できる。

 すでにNHKテレビでこの曲がテーマソングとなっている「ドリーム〜90日で一億円〜」3/29〜(全24回)が開始され,主題歌としてこの曲がワンコーラスだけエンディングに使われるようになった。また,カップリング「Lover Boy」はが関西テレビ プロ野球中継2004テーマソングに決定。ダブルタイアップの強力シングルとなった。

 4月23日,いよいよラジオオンエアが解禁になりすべての歌詞が明らかになった。

 歌詞は友人とも恋人とも,あるいはファンとも取れる誰かが差し伸べてくれる手に希望を託しながらも,今は自分の力で進んで行きたい。でも,どうしても辛いときは「君」がいてくれるから怖いことはない。必ず素晴らしい未来へたどり着ける-という非常にポジティブなもの。

 この曲のモチーフになっていると考えられるサイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」は,下に大意を掲載しているが,「君のために自分が犠牲になってでも,きみの心の苦しみを楽にしてあげよう」という曲であり,倉木の曲なら「happy days」と同じコンセプトを持つ。

 しかし,この 「明日へ架ける橋」はニュアンスが少し違うようだ。倉木はここで,自分を助けようと差し出された誰かの手すがりつくことなく,

 「傷つくことを恐れずに 今は自分の力で歩んで行きたい」

という,いわば精神の独立を超え高らかに宣言している。そして,「橋」は誰かが架けてくれるものではなく,「自分で築いていく」ものであり,だからこそどんなにつらい道のりでもきっとたどり着けることができるという。

 しかし,決して倉木は孤独になったわけではない。次の瞬間,夢破れ心傷ついたときも,そこには「君がいる」。友でもあり,恋人であるかもしれない「君」。決して押し付けがましくはなく,求められるときにそこにいてくれる「君」。その君の力を借りながら辛かった過去を乗り越え,昨日よりもすばらしい「明日」をともに生み出すことが出来る。

 独立した精神を保ち自由を満喫しながらも自分を支えてくれる友のことは決して忘れることはない。どんなに傷ついた人々も,また必ずめぐり合うことが出来る。

 かつてThe Beatles「Let It Be」

And when the broken-hearted people living in the world agree,
There will be an answer, "Let it be."
For though they may be parted, there is still a chance that they will see.
There will be an answer, "Let it be."

 この世の 悲しみにうちひしがれた人々が
 心を一つにあわせるとき
 "こたえ"はもたらされるのです
 なるがままになさい
 別れてしまった人たちにも
 いつか 出会える日が来るのです
 そのとき "こたえ"がもたらされます
 今はそのままでいいのです       ちゃぶー訳

とうたい,また,倉木自身が「Time after time」

 人は皆孤独というけれど
 探さずにはいられない 誰かを

と歌ったように,倉木は決して人は一人では生きていけないことを知っている。

友や恋人などまわりのいろいろな人たちの助けがあるからこそ,人は生きていける。この当たり前の「真実」を倉木は何と美しく歌い上げたことだろう。

 「橋」とは人と人をつなぐもの。人によっていろいろな橋がある。木の橋,石の橋,鉄の橋・・・。しかし,倉木は歌う。友の助けがあれば必ずその橋は虹色に輝き,我々を明るい明日へ導いてくれる。その先頭に立つのは菩薩の姿をした倉木自身であろうか。"Let It Be"で聖母マリアの姿をした母親がPaul McCartneyを闇の淵から導き出したように。

 「翼をください」「贈る言葉」「乾杯」のような,感動の瞬間に皆が肩を組んで涙とともに歌うことが出来るような歌を,倉木は今まで持たなかった。しかし,今やここに新しいスタンダードが生まれた。全国の卒業式で,キャンプファイヤーで,結婚披露宴で,きっとこの歌が歌われるときが来るだろう。その意味で,今までの倉木のキャリアの中でもっとも広く愛される曲になるかもしれない。

 "切なさ"と明るい"希望"が共存した佳曲であり,イントロから1番最後までとブリッジ部分の編曲を担当したのが作曲家である徳永暁人。ピアノを中心に置いたシンプルかつ胸キュンのバラード構成。2番からは池田大介によるストリングスとドラムやベースががらんでくる重厚で荘厳な構成。コーラスは間奏も含めて,全て倉木自身がハモっている。

 歌詞は現状肯定的な人生応援歌だが,さらに前向きであり,昔からの倉木ファンにもアピールしやすいのではないだろうか。

 曲調はいつもの徳永の感じとはやや違う。今回は力で押すことを避けて手を広げて聞くものを包み込むような優しさを感じる。どちらかというと大野テイストを感じる。大野ファンにも訴えるものがあると思う。

 ということで,プロモーションを間違えさえしなければ,かなりにヒットが見込まれるのではないかと思われる。いや,ヒットさせなければならない名曲であろう。

 「If I Believe」で過去を振り払い,「自分は自分である」ことを確認した倉木はここにおいて精神の独立宣言を行い「おとな」として,確固たる自信をもったアーティストとして我々の前に復活した。それは「風のららら」から丸1年。誰もが待ち望んだ光の復活であった。


「Lover Boy」

 打ち込みを使わずキーボードも手弾きで,ライブ感を強く出している。コーラスは倉木麻衣と作曲家の大野愛果。

 曲は「This is your life」を思わせるイントロから,絵に描いたような「大野節」。久しぶりにラジオボイスと倉木自身による英語ラップが聞ける。導入からサビへ移る意外性が耳に残る。ブリッジ(大サビ)の部分は予定調和的ではあるが気持ちいいほどツボにはまり,エンディングの大団円を導く。

「すべて完璧なんてないよね どんな人でも悩んだりしてるはず
 だから私後悔しないよ 話してみよう そう好きなんだ君を」

 自分を「私」というからには主人公は女性。そして男性を「君」と呼ぶときの倉木の歌詞の小気味よさ。悩んだこともあるけど,自分は自分,やっぱり信じた道を行くしかない!5年間相も変らぬ倉木節。しかし,マンネリに陥ることなく強いメッセージを送る。その対象は決して思春期の問題に悩む少年少女だけでなく,就職で悩む大学生や,子供のことで悩む主婦,リストラに苦しむサラリーマン…すべての日本人に送る絶対的応援歌となった。地域限定的なタイアップはあるもののカップリング曲で終わらせるにはあまりにも惜しい名曲。両A面扱いでもよかったのではないか。


「愛をもっと」

 MIXはYOKO B.Stone自身が3種類作り,そこから倉木自身ががベストテイクを選んでいる。

 曲は失恋を歌った非常に切ないR&B。多重コーラスが効果的であるために,あたかもアメリカでよくある3人組の黒人女性R&Bグループが歌っているような感じを受ける。今までの倉木にはちょっとなかったような感じの曲である。

 歌詞は

「愛をもっと,切ないほどにもっと」
「だって,ここまで来たのだって」

とたたみかけるように歌うサビが印象的。久しぶりに英語詞をたくさん聞くことが出来る。

 雰囲気は「always」の次に出たシングルといった感じで,倉木的には懐かしいムードが漂う。

 ボーカルは縦横無尽に躍動し,倉木が一番ノッていた時を凌駕し,恐ろしいまでのボーカルテクニックを見せる。控えめにいっても,少なくともYOKO Black.Stoneが倉木に提供した曲としては,「kiss」を凌ぎ,最高傑作といってもいいのではないか?これほど質の高いカップリング曲は他に類を見ない。


 この次点ではっきりといえることは,このシングルは「明日へ架ける橋」一曲だけであれば,その素直なまでの上品さがかえって災いして,多くのファンサイトBBSでささやかれているように,「Stay by my side」を超えて倉木の代表作になることは出来なかったかもしれない。しかし,このCDはあくまでこの3曲の総合体として考えたい。荘厳かつ神々しい「明日へ架ける橋」,ストレートで元気のいいポップナンバー「Lover Boy」,マイナーコードの切なさがいっそう冴える悲しみの「愛をもっと」。三者三様の多様性を持ち,聴くものの心を捉え決して飽きさせることはない。そして,「明日へ架ける橋」「always」「Secret of my heart」のような前向きな荘厳さを持ちながら,今までなかったほど神々しく,「Lover Boy」「Feel fine!」「Ride on time」を併せたようなグルーヴを持ち,徳永調のスピードを持つ大野節である。「愛をもっと」は倉木ファンにとっては耳になれたYOKOの曲のエッセンスを本格的なアメリカンR&Bで処理した名曲。「think about」「thankful」の情景描写を持たせモータウンに任せたらこんな曲になるだろうか。言いたいことは,この3曲ともがどこかしら「懐かしいMai-Kの服を着た新しい倉木麻衣」を表しているということだ。すなわち,熱狂的ファンにとってはもちろんのこと,しばらく倉木のCD購入から離れていた「元ファン」,そして倉木のことをよくは知らなかった新しいファン,また曲のよさに惹かれ今回だけはと購入を決めた「浮動票」…。この四者が四様の理由でもってこのCDを購入するであろう。カップリング曲を上手に紹介することによって,さらに大きなヒットへ導くことが出来るのではないかと思うので,GIZAにはぜひ,「Lover Boy」「愛をもっと」の効果的なPRによって大ヒットも目指してもらいたい。この3本の矢は強く遠くまで飛んでいくだろうから。


年若いファンでサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」を知らない方のために,以下この曲の歌詞の大意を示しておく。

君が疲れ果てて 自分が小さくなってしまったように感じるとき
君の瞳が涙で一杯のときには 僕がその涙を乾かしてあげよう
僕はいつでも君の味方さ
辛いときが来て 友だちも見つからないときには
逆巻く水に架かる橋のように 僕が身を投げかけてあげよう

君が打ちひしがれて 街をさまようとき
どんなに辛い夜がやって来ても 僕が君をなぐさめてあげる
僕が代わってあげる
あたりが闇に覆われて 苦しくてたまらないときには
逆巻く水に架かる橋のように 僕が身を投げかけてあげよう

銀色の少女よ 船を出そう 出発するんだ
今 君が輝くときが来た 君の夢ももうすぐ全部かなうさ
さあ その夢の輝きを見つめていよう
君に友だちが必要なら 僕がすぐ後ろをついて行ってあげる

逆巻く水に架かる橋のように 僕が君の心を楽にしてあげよう
逆巻く水に架かる橋のように 僕が君の心を楽にしてあげよう

ポール=サイモン:詞,ちゃぶー:訳


 ところで,この曲はどういった売れ方をするのだろうか。少し楽しみである。

 というのはヒット曲というのはヒットするパターンに2通りある。ひとつはチャートに「初登場第1位」登場という売れ方。これは

「どんな曲であろうとも好きなアーティストの曲だから無条件に買う」

というヒットのし方で「人気アイドル方式」とでもいえる。このタイプの曲は,一気に人気が沸騰するものの,固定客が買い終わったあとはセールスが急速に落ち込んでゆき,余り大ヒットにならないことが多い。

 もうひとつは無名アーティストや最近ヒットとはご無沙汰だったアーティストの曲が,曲のクオリティに支えられてヒットチャートをじわじわと駆け上がり,ロングセラーとなるという方式である。倉木の場合,後者は「Love, Day After Tomorrow」のみであるが,実はこちらの方が巨大なヒットになりやすい。

 倉木の場合は今まで熱心な固定ファンに支えられたアイドル的なセールス方式が目立ったわけだが,最後のシングルであった「風のららら」から1年近くブランクがあり,その間に紅白歌合戦出場やベストアルバム発売等の戦略によって新しいファンを獲得もしているので,少し状況が変わってきた。また,NHKの「よるドラ」というやや年齢層の高い視聴者をターゲットにしたドラマの主題歌になるという理由もあって,ひょっとしたら今までとは違うパターンも出てくるかもしれない。

 どういった売れ方をするかということも興味を持って見守りたい。