「Mai-K研究」参考資料1
1.西洋近代音楽の成立 西洋における音楽は,ギリシア・ローマの古典時代から,自由人の教養として重視されてきた。中世においては,教会音楽や吟遊詩人(トゥルバドゥール/11〜13世紀に,南仏のラングドックなどに出た吟遊詩人群。作詞・作曲して,たて琴にあわせて城から城へ巡遊して歌った。その詩は騎士的恋愛を賛美した叙情詩を本質とする。〈数研出版『世界史辞典【新制版】』〉)らの活動により発展したが,現代へつながる西洋の音楽は,基本的に15〜16世紀に登場した,ルネサンス音楽をその基礎とする。その後,17世紀には絶対王政国家の成立により,至高の権力を握った君主や貴族たちの慰みのためのバロック音楽が成立し,オーケストラの形態・演奏方法・音楽理論等,現代音楽の原形が形成された。(この時期の音楽が現代大衆(ポピュラー)音楽にも大きな影響を与えていることは,バッハのオルガン曲『小フーガ・ト短調』と,ディープ=パープルの『紫の炎』におけるジョン=ロードのオルガン=ソロを比較すれば明らかである。)しかし,この時代の器楽曲・声楽曲・オペラ・バレエ音楽などの音楽は,基本的に支配者の音楽であり,一般大衆の音楽は,祭りや日常生活の中で自然発生的に歌われるようになった“民謡”(フォークロア,folklore )や,“子守歌”(ナースリー=ライム, nursery rhyme),あるいは,辛い労働の慰めとしての“労働歌”など,非常に生活に密着したものであった。しかし,これらは民間で口承で伝えられるものであり,いわば現代の“ポピュラー音楽”的な要素を多分に持っていた。 2.バロックからクラッシックへ バロック音楽の流れは,17〜18世紀のバッハの時代から始まり,18世紀末〜19世紀初頭に,モーツァルトやベートーヴェンによって“古典(クラッシック)音楽”として完成される。しかし,この時代になっても音楽は基本的には支配階級のものであり,彼らの聴衆は,不特定多数の一般大衆ではなく,特定の保護者(パトロン)であり,モーツァルトも,まだ保護者の支援によって生計を維持する必要があった。ベートーヴェンは,初めて楽譜の売り上げなどの,“大衆むけ音楽”で生活できた音楽家であると言われる。彼は,当時最も前衛的な作曲・演奏家であり,その後19世紀に発展するロマン派音楽の基礎を築いた。 19世紀後半になると,民族性やロマンチシズムを強調した,“ロマン派音楽”が登場する。しかし,その代表者であるショパンやチャイコフスキーらの音楽もまた,新たな支配階級”となったブルジョワ(資本家)たちのものであり,音楽が下層階級をも含む一般大衆のものになるには,もうしばらくの時間を有した。
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