■初回盤:■初回盤:PV収録DVD付属
■通常盤:
【タイアップ】
オリコンデータ
「等身大の魅力」というのは倉木麻衣のデビュー当時からのキャッチフレーズであるが,この曲は,あえてその魅力を前面に押し出して世に問うたものといえよう。
しかし,楽曲としての魅力自体はここしばらくのシングルの中でも決して突出しているとは言い難い。音楽は淡々と進みサビにも大きな飛躍はない。挿入されるラップは青山テルマの大成功の線を意識しているのかもしれないが,歌詞と同じく“中学生の作文”的な内容であり,大きな感動を盛り上げるには役不足である。
しかし,以上の「感想」はあくまでオーディオシステムの前に腰を据えて楽曲を集中して聞いたときのものである。ひるがえって,この曲を(まさにこの曲のPVのように)クリスマスパーティのBGMとして聴いたときには多少フィーリングも違ってくる。
音の数が多く,部屋で聞くには“うるさく”感じることがあるが,パーティ会場では心地よく聞こえるのかもしれない。私の感覚と違い,多くのファンがこの曲を高く評価しているのは,上記のようにこの曲を相対的な“場の音楽”として鑑賞しているのであろうか。クリスマス版「I don't wanna lose you」といったところか。
それはすなわち,ハードカバーの純文学をひも解くのではなく,ファッション雑誌をぱらぱらとめくっていく感覚であろう。決して倉木の代表作にはなりえないだろうが,デビュー10周年の年末を飾るに不足があるわけでもないだろう。
余談ではあるが,この曲の録音は非常によい。倉木の曲でこれほどボーカルを過剰にイコライジングせずにはっきりした分離を持ってミキシングしている曲は少ない。倉木の「声」を純粋に楽しみたいファンには最高のクリスマスプレゼントであろう。
一方このカップリング曲は非常に出来がよい。
久しぶりにR&Bのテイストを持った本格的なバラード。こちらは上手に使えば倉木の代表作のひとつにもなりうる佳曲。ところどころには倉木の声が最も映えるファルセットも挿入されており,ファンにとっては堪えられない。
ギターの弦を指がこする音などのアコースティックな響きも満載で,なぜこちらを“A面”にしなかったのかといぶかしくなる。
歌詞も脳天気な「24」に比べればかなり文学的。このシングルはこの曲と「24」を表裏一体として捕らえるとき,ようやく製作者の意図が正確に伝わってくると思う。
私は先日touch me!ツアー福山公演に参加してきたが,その“新しさ”に驚いた。「All I want」は「24」で新しいことをやる裏返しとして,ファンに送ってくれた“Mai-K tradition”なのかも知れない。