あまつ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 僧正遍昭
【通釈】天空を吹き渡る風よ、雲をたくさん吹き寄せて、天上の通り路を塞いでしまっておくれ。天女の美しい姿を、もうしばらく引き留めたい(舞姫たちが退出する道を閉ざしてしまってくれ。もう少しその姿を見ていたい)。http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/henjou.htmlより
道のべの 清水ながるる柳かげ しばしとてこそ 立ちとまりつれ 西行
【通釈】道のほとりに清水(しみず)の流れるこの柳(やなぎ)の木陰(こかげ)には、ほんの少しの間休もうと思って立ち止まったのだったが、涼(すず)しくて心地(ここち)よかったので、つい長居(ながい)してしまったことだ。http://www13.plala.or.jp/hosonag/jukentanka2.htmより
この二つの和歌を効果的に使った秀作。作者の死後100年以上を経ているため著作権は消滅しているので,倉木は自由に使用してもかまわない。和歌と歌詞の間には余り意味のつながりはなく,あくまでもイメージとして使用したということだろうが,「今日あるものが 明日もあると限らないもの」というのは仏教思想の“諸行無常”を歌っており,古典とのミスマッチはない。「State of mind」は「心もよう」くらいの意か。
曲はポップで快適。「Fuse of love」の「LOVE SICK」の位置づけだろう。2006のライブではもっとも愛される曲になりそうな気がする。
この曲の着歌が鳴り,倉木自身が電話を取って曲が始まるという演出も面白い。
イントロは“四畳半フォーク”。「そうね〜」とこのアルバムでは珍しく女言葉の歌詞。伝統的日本歌謡曲の系譜上の曲。
“cherish”はもちろん「てんとう虫のサンバ」とは関係なく「いつくしむ」という意味の英語。
曲調は桑田佳祐のムード。このアルバム2曲目のラップが印象的だが,こちらの方が出来がよい。
この曲のボーカルアレンジは倉木自身が担当し,コーラスもサンプリングは使用せずにすべて生声で歌われたという。倉木を“アイドル視”する人はまだ多いが,もはやそのような議論を過去のものとする曲であろう。