delicious way

 「happy days」 は,倉木の真実を垣間見ることができるという意味において,このアルバム中屈指の「名曲」ということができる。

 彼女自身も語っていることだが,倉木は歌手になるために転校し,かつての親友たちと離れ離れの生活を始めることになった。しかし,中でも最も倉木に大きな影響を与えていた友人の存在は倉木にとって何物にも替え難く,失うことは考えられない人であった。その親友との別れと思い出を,大野愛果の限りなく切ないメロディが紡ぎ上げる。ひょっとしたら倉木の全キャリアの中でももっとも感動を呼ぶ作品といっていいのかもしれない。ちなみにこの「親友」は,アルバムジャケットの最後において「Special Thanks to Ms. M.S(For happy days)」とクレジットされている。これを挿入した倉木の意思には脱帽するが,それを許可したレコード会社にも賛辞を送りたい。なお,このM.Sさんが倉木にとってどのくらい重要な人物であるかは,1stツアーの最終日,わざわざ,倉木自身がステージの上から「この親友が今日この場所に来てくれています」と聴衆に向かって語るほどである。

 「君との時間」 は倉木初の日本語タイトル曲。再び笠原智緒の曲。アルバムのエンディングにふさわしく,ゆったりとやさしくしっとりと歌われるこの曲でもって,この瑞々しいアルバムは大きな余韻を残しながら幕を閉じる。ファルセットを多用しながらヴォーカルは変幻自在に音符の間を渡り歩き,ここでの倉木は後に大きく開花するバラードシンガーとしての才能を十分に発揮している。

 アルバムのジャケットはまっすぐにこちらを見つめる倉木の顔のアップ。そこには「Love, Day After Tomorrow」のPVで見せた「可憐な美少女」の姿はなく,意志の強い瞳を持つ聡明な女性としての倉木が現れる。不思議とこの構図は第3作目の「FAIRY TALE」まで変わらない。

 ジャケット表紙は透明のプラスチックに白黒で印刷されており,顔が浮き上がって見えるような仕様となっている。費用もかかったろうが,このアルバムの驚異的なセールスを考えれば,十二分にペイしたはずだ。


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