No.2


 この中でライブの実力を疑問視するのはおそらく「happy live」に参加したかDVD(Video)「Eternal Moment」を見て,それが倉木のライブパフォーマンスの有り様だと思っている人たちであろう。このライブは倉木初のライブパフォーマンスであり,通常の有料コンサートではなく,コカコーラ社が自社製品の販促用キャンペーンとして行った無料招待ライブであった。会場は小規模なライブハウスが選ばれ,パフォーマーとオーディエンスの距離も非常に近い。倉木最初のライブはこのような環境の中で行われた。

 倉木という人はどうやら大変なあがり性のようだ。2003年の紅白歌合戦で歌いなれているはずの「Stay by my side」の歌詞を間違えたことは記憶に新しいが,他のライブでも,歌詞の間違い・忘れ,歌いだしポイントの間違いは結構目立つ。おそらく大変な緊張の中で自分を見失いがちになるタイプなのだろう。その意味で,「happy live」は確かに完璧なパフォーマンスとは言いがたい瞬間もあった。緊張のためか,視線はさまよい,指先は泳ぎ,心ここにあらずという表情を見せることもあった。エクスペリエンスとの相性もまだ今ひとつで,お互いに手探り状態であるようにも感じる。また,学業との両立を図りながら,限られた時間の中でのリハーサルであったのだろうが,やはり準備不足の感はある。したがって確かに,このライブだけ見れば倉木は「最高のライブパフォーマー」とは呼べないかも知れない。プロなのだから言い訳は許されないが,やはり「満を持して」のライブではなかったような気もする。「歌を聞かせる」ことよりも,神秘のベールに包まれていた倉木麻衣を,ファンに「見せる」ことに主眼が置かれたのかもしれない。


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