続いて「倉木麻衣の音楽」について語ろう。しかし,彼女は自分で作曲をしない。ライブで楽器を演奏することはあるが,その腕前についてはそれほど信頼がおけるものではない。ちろん制作の過程でさまざまな意見を述べることはあろうが,やはり「倉木麻衣の音楽」に関しては制作者側,たとえばレコード会社やプロダクション,作曲者(大野愛果,徳永暁人等)や編曲者(cybersound)の果たす役割が大きい。そこは誤解せずに指摘しておきたい。
倉木の音楽の特徴の一つにメロディの複雑さがある。
私も作曲をすることがあるが,簡単に一曲作り上げようとすれば,たとえば
A1(C-Am-F-G)
-A2(C-Am-F-C)
-サビ(F-C-G-C,F-C-D-G)
-A1(C-Am-F-G)
-A2(C-Am-F-C)
の2つのメロディで済む。きわめて単純だが,昔からこのパターンで作られた名曲は数多い。
しかし,倉木サイドは決してそのような"simply wonderful"な曲を作らない。多くの曲は複雑なメロディが絡み合い,独特の音楽世界を作っていく。この傾向はシングルよりアルバム曲に多いようだ。シングルでは,ある程度キャッチーな曲を作り,アルバムでは納得いくまでこだわるというところか。