この「第3のメロディ」に関していえばもうひとつの使い方がある。それは,メロディを表に出すのではなく主旋律のカウンターパートとして裏でコーラスが別のメロディを歌うというもの。たとえば「Reach for the sky」などが顕著であるが,これも実はビートルズが多用した方法である。(同じコード進行で,2つのメロディを歌うのは「I've Got A Feeling」,またポール=マッカートニーのソロ作「Silly Love Songs」では3つのメロディが同時に歌われる。さらに「後追いコーラス」が第3メロディを歌うのは「You're Gonna Lose That Girl」など)倉木は別のところで,「Reach for the sky」はビートルズのようなトラックを作ろうと思ったと明言しているので(Mai-K.netダイアリー#08),これは偶然ではなく意図的に行われた作業であると思う。私が短時間で倉木麻衣の音楽に魅せられた理由は実はこのように,彼女の音楽が私の心の中のノスタルジックな琴線に触れたからなのかもしれない。
音楽についてはまだまだ書き足りないことが多いが,これも後は「曲目解説」へ回させていただく。